
本レポートでは2025年6月における検索エンジン最適化の動向と、今後のWebマーケティング戦略において押さえるべきポイントを報告します。今月最も注目すべき出来事は、6月30日日本時間23時30分頃に開始されたGoogleコアアップデートのロールアウトです。このアップデートはあらゆる種類のサイトにおいて、関連性が高く満足度の高いコンテンツを検索ユーザーにより適切に表示することを目的としています。加えて、AI OverviewsやAI MODEの導入強化に伴い、大規模言語モデル関連のアルゴリズムへの影響も十分に考慮する必要があります。ロールアウト完了まで最大3週間を要する可能性があるため、検索順位の変動が長期化することも想定しておくべきでしょう。本レポートでは、従来のSEO施策に加え、LLMO(AI対策)という新たな観点から、今後取り組むべき施策の方向性を整理しています。
コアアップデートの概要と検索順位への影響
2025年6月30日に開始されたGoogleコアアップデートは、検索品質の向上を目的とした定期的な更新の一環です。Googleの公式ステータスページにおいても、このアップデートに関する情報が公開されており、全世界のウェブマスターやSEO担当者が注目しています。コアアップデートの特徴として、特定のペナルティを与えるものではなく、検索結果全体における評価基準の調整が行われる点が挙げられます。これまで上位表示されていたページが順位を落とすケースもあれば、これまで埋もれていた良質なコンテンツが浮上するケースもあります。今回のアップデートでは特に、AI関連機能の強化と連動している点が従来と異なります。AI OverviewsやAI MODEといった機能が検索結果に組み込まれることで、ユーザーが求める情報の提供形態そのものが変化しつつあります。そのため、単に検索順位だけを追うのではなく、AIによる情報抽出の対象となるようなコンテンツ設計が求められるようになっています。ロールアウト期間中は順位変動が激しくなる傾向があるため、この期間に過剰な施策変更を行うことは避け、データの推移を冷静に観察することが重要です。
LLMOへの対応と多様なニーズに合わせたコンテンツ設計
従来のSEOに加えて、LLMO(Large Language Model Optimization)すなわちAI対策への取り組みが今後ますます重要になります。LLMによる回答は検索者ごとにパーソナライズされる傾向があり、一つのクエリに対しても多様な文脈や意図が存在することを前提にコンテンツを設計する必要があります。具体的には、さまざまなニーズに対応できるよう、複数パターンのコンテンツを用意しておくことが効果的です。ここで再び注目されているのが、ピラー+クラスター(トピッククラスター)という考え方です。主軸となるトピックを中心に、派生する検索意図をより細分化して関連コンテンツを整備することで、LLMがさまざまな角度からの質問に対して適切な情報を抽出しやすくなります。例えば、製品やサービスに関する基本情報だけでなく、利用シーン別の解説、よくある質問への回答、比較検討に役立つ情報など、ユーザーの検索文脈を想定した多角的なコンテンツ群を構築することが求められます。これにより、従来の検索エンジン経由のトラフィックに加え、AI経由での情報提供機会も拡大することが期待できます。
AI Overviewsの表示率は着実に増加しており、2024年9月時点で米国では約20〜23%の検索結果に表示されていたものが、2025年5月時点では検索全体の約49%にまで拡大したという報告もあります。日本でも2024年8月にAI Overviewsがリリースされ、表示対象が順次拡大されています。
アクセス解析における正確なデータ把握の重要性
弊社の独自調査により、サーバ上の生ログ(rawdata)を用いたアクセス解析とGoogle Search ConsoleやGoogle Analyticsのデータとの間に乖離があることが判明しています。実際には、Google提供ツールの数値よりも多くの新規流入が確認されるケースがあり、この傾向はAI生成コンテンツが検索結果に導入された影響と考えられます。AI OverviewsやAI MODEを経由したアクセスについては、従来のGoogle解析ツールでは正確に計測できない場合があるためです。このような状況において、コンテンツの削除やリライトを検討する際には注意が必要です。表面上のアクセス数が減少しているように見えても、実際にはAI経由での流入が発生している可能性があります。不用意にコンテンツを削除したり大幅な修正を行ったりすることで、せっかくのトラフィックを失うリスクがあります。各ページの状況をより正確に把握するためには、サーバログとの照合や複数のデータソースを組み合わせた分析が推奨されます。また、今後はAI経由のアクセスを測定するための新たな手法やツールの開発も進むことが予想されるため、最新の動向に注目しておくことが重要です。
サイト内構造とディレクトリ設計の最適化
Googleが導入したQuery Fan-outという仕組みは、1つの検索クエリに対して複数の関連性の高いサブクエリを生成し、より幅広く適切なコンテンツを収集・評価するものです。この仕組みを踏まえると、テーマやトピックごとに整理された明確なディレクトリ構造を持つことが、検索エンジンのクローラに対してコンテンツの意味的関連性を効果的に伝える上で重要になります。現状、サイトのディレクトリやカテゴリ構造が曖昧であったり、関連情報へのナビゲーション(内部リンク)が不十分な状態にある場合には、構造の見直しが必要です。適切なディレクトリ設計を行い、それに合わせて構造化データ(Schemaマークアップ)を導入することで、検索エンジンがコンテンツの関係性を理解しやすくなります。近年はデータベース型の構造を採用したサイトの検索順位が向上する傾向が顕著になっており、単なるブログ形式の羅列ではなく、情報同士が体系的に繋がった構造が評価されています。ディレクトリ構造の整理に加え、コンテンツ同士を適切に繋ぐための導線設計を強化し、ユーザーと検索エンジンの双方にとって分かりやすいサイト構造を目指すべきでしょう。
今後の見通しと推奨される対応方針
2025年6月のコアアップデートを受け、今後のSEO戦略においては従来の施策に加えてLLMO対応という新たな視点を取り入れることが不可欠です。アップデートのロールアウト期間中は順位変動が続く可能性があるため、この期間に過度な施策変更を行うことは控え、まずはデータの推移を観察することをお勧めします。ロールアウト完了後に順位が安定してから、必要に応じた調整を行うのが賢明です。
中長期的な視点では、以下の3つの柱に取り組むことが重要です。
- 多様な検索意図に対応したコンテンツ群の整備として、ピラー+クラスター構造を採用し、主軸トピックから派生する検索意図を細分化したコンテンツを準備する
- サイト構造の最適化として、明確なディレクトリ設計と構造化データの導入により、検索エンジンとAIの双方がコンテンツの関係性を理解しやすい環境を整える
- 正確なアクセス解析体制の構築として、Google提供ツールだけでなくサーバログを含む複数のデータソースを組み合わせ、AI経由を含む実際の流入状況を把握する
特にLLMO対応については、まだ確立された手法が少ない分野であるため、仮説検証を繰り返しながら知見を蓄積していくことが求められます。SEOとLLMOは対立するものではなく、相互に補完し合う関係にあります。質の高いコンテンツを体系的に整備し、ユーザーにとって価値のある情報を提供するという基本姿勢は変わりません。その上で、AIによる情報抽出にも対応できる構造とマークアップを整えていくことが、今後の検索戦略における成功の鍵となるでしょう。

